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第48回:南原繁

ビブリオイズム048

 現在、南原繁の名を聞いて何かしら感じるところがある人は、少なからずアカデミズムの世界に関心のある人だろう。

 戦後最初の東大総長である。あるいは丸山真男の師匠といった方が通りが良いだろうか。いずれにしても今や知る人ぞ知るの人物になってしまった。確かに実際、学者として歴史的大著を著したわけでもないし、歴史的大事件の主役であったわけでもない。事件といえばせいぜい吉田茂に「曲学阿世の徒」と罵られたことくらいである。

 学者の生き方も人それぞれで、静かに自分の学問分野を修めて学生を指導して一生を終える人もいれば、何か例えばノーベル賞級の発見や学説でセンセーショナルに取り上げられる人もいる。あるいは口だけ上手でマスコミに引っ張りだこのガクシャ先生もいる。南原繁は静かに学究生活を送るタイプと言えようが、問題は時代である。戦争真っ只中、あるいは戦後の混乱期に学問をすることほど難しいことはない。敗戦でぐちゃぐちゃの中で、学問という一見生活と切り離された営みを淡々と続けられることはある意味鉄の意志である。それは南原繁が常に理想を見失わない人だったことの証明である。そして南原の尊敬できる点は、理想の中で自己満足な踊りをするのではなく、現実とも切り結ぶ覚悟を持った人であったという点である。政治哲学は、現実の政治事象に交渉を持つのでなければ無意義である、という信念を持った人、自ら「イデアル・リアリスト(理想主義的現実主義者)」を自認する人であった。そうでなければ、戦後の混乱期に東大総長を6年も務め上げることは難しかったであろう。

 本書は一政治哲学者の評伝ではあるが、学者を志す人へのひとつの指針となる本であると思う。成果に目をくらまされることなく、しかし理想を失わず、淡々と日々を学問に費やすことが不断にできる人こそ学者の名に値する。


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第47回:十三妹

ビブリオイズム047

 舞台は三百年前の中国。大邸宅の深窓の奥の奥、第一夫人と第二夫人が首を切り落とす話をしているところから物語は始まる。この第二夫人が主人公・十三妹。十三妹と書いて「シイサンメイ」と読む。中国女侠客のお話である。

 平成の時代にあって戦うヒロインの話はごまんとあるが、これが書かれたのは1960年代である。しかも新聞小説でである。武田泰淳も思い切ったことをしたものである。どうやら時代を先取りしすぎたようで、あまり売れなかったらしい。十三妹が元祖戦うヒロインとするならば、夫人に守られるインテリご主人様・安公子は元祖草食系男子といったところか。どこまでも先取りである。


第46回:若き詩人への手紙 若き女性への手紙

ビブリオイズム046

 リルケの名前を知ったのは映画「天使にラブソングを2」である。その中でウーピー・ゴールドバーグ演ずる主人公が教え子の女子学生に対して「若き詩人への手紙」の一節を引き合いにアドバイスを贈るシーンがある。この映画を好きになった人はきっと同時にこの本も気になると思う。

 本書はリルケが実際にある若い詩人とやり取りした手紙をそのまま収録した作品である。詩という芸術の世界における生き方の指南書であるが、ひとつの世界を徹底的に生き抜いた人の言葉には、芸術の世界だけではなく何かしら人生一般に通じるものが含まれていると感じる。個人的には、絵をものしている身としてそのままストレートに響く言葉があらゆるページに見られる、折に触れひもとく一冊である。

 映画の中で紹介されていた一節は、全く同じ形で本の中にあるわけではないが、この言葉が下敷きになっている。
 「もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白してください。」

 本との出会いは縁である。この本に出会えた縁を喜びたい。


第45回:中東 迷走の百年史

ビブリオイズム045

 イスラム教やコーラン、中東に関連した本はほとんど読んでこなかった。興味はあったがどこから手をつけて良いか分からなかったし、そうこうしているうちに現実の中東情勢が複雑に入り乱れていってしまって結局、ますますどこから手をつけて良いか分からなくなる有様だった。しかし前回紹介した「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」で少しとっかかりができたので、新書でコンパクトに入門できるものはないかと探したところ本書に行き着いた。

 お恥ずかしい話イランイラクの場所も自信を持って答えられないほど貧しい知識だったので、本書に収録されている中東地図がありがたかった。
 本書はイラク、イラン、イスラエル、パレスチナ、サウジアラビア、イエメン、トルコ、アフガニスタンなどいわゆる中東とよばれる地域のここ100年の歴史に絞って概説した本である。詳しく知りたい向きにはさらに専門の各国史に当たらねばならないが、新聞報道をきちんと理解したいというレベルであれば本書で十分に基礎知識を得ることができる。先にも書いたが初心者に何よりありがたいのは中東の地図である。もちろん地図帳を開けば問題ないわけだが、中東に弱い当方としては中東の地図だけとりあえず瞬時に確認したいわけで、その点で網羅性のある地図帳より本書の地図の方が個人的には数倍ありがたいというわけである。

 すごくすごく、すごーく乱暴な言い方をすると結局中東という地域はアメリカイギリスソ連が石油欲しさにぐちゃぐちゃにしてしまったということができる。もちろんその下には日本を含め石油に依存するすべての国がぶら下がっているわけであるが。
 混迷の歴史に当の中東の人々の責任が全くないとは言わない。ただ甘い汁を吸おうとした大国の責任は決して小さくはないし、日本人である自分もそこに一枚かんでいることは忘れないでいたいとは感じた。


第44回:ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座

ビブリオイズム44

 最近は教養として世界の歴史や宗教を知っておきましょうという考えが浸透してか、「3時間でわかる~」とか「まるわかり~」とか「これ一冊で~」などと冠する教養本が書店で溢れかえっている。それ自体は悪いことではない。各人の教養の裾野が広がることは、まあ悪くはない。(ただ広がりすぎるのも実は問題だが。)
 本書は「逆説の日本史」で有名な井沢元彦氏が三つの一神教について各宗教の論客と対談している本であるが、一冊ですべてわかる的な本ではない。もちろん前半は井沢氏による基礎知識の講座が書かれており一応入門書の役も果たすが、本書の面白さはそこではない。後半の対談が面白い。井沢氏が結構舌鋒鋭く相手に切り込んでいくので、相手も耳障りのない話だけでお茶を濁すことができず、本音がちらほら見え隠れするのである。

 「イエスは救世主だ」「いや違う」「コーランこそが神の最終最後の言葉である」「キリスト教もイスラム教も結局ユダヤ教から生み出されたのだ」云々。各宗教いろいろなところにそれぞれの言い分や拠り所があり、皆それぞれの信仰を持っていて、どこかで食い違ってくることもあるということは本書を読んでいてわかるのだが、結局のところ最後に思うのは以下の一言に尽きる。

 神さまのことで殺し合いすんな!

 これは何も分かっていない平和ボケした日本人の戯言じゃない。僕が日本人だから胸を張って言える、人間としての本当に大事にしなくてはならない真の信仰であると思っている。


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タニグチゲン

Author:タニグチゲン
紙の本が好き。
お気に入りの本をオリジナルイラストとともに紹介します。

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